大判例

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東京高等裁判所 昭和56年(う)1708号 判決

原判決は、押収してある覚せい剤一袋を原判示第二の罪に係るもので被告人の所持するものとして、覚せい剤取締法四一条の六によりこれを被告人から没収しているが、その当否について職権をもつて判断すると、関係各証拠によると、被告人は、昭和五六年六月一八日夜、被告人が経営していた原判示第一記載の遊技場の氏名不詳の遊客から、勝負に負けたため帰りの車代がなくなつたので、金を貸して欲しい旨の申し入れを受け、同人に現金二萬円を貸し付けたが、その際、翌日には現金を持参のうえ右覚せい剤を取りに来るというので、右貸金の担保にこれを預つたものであり、そして、同人との間で明確な約束が取り交わされたわけではなかつたけれども、もし同人が翌日取りに来なかつた場合には、被告人においてこれを処分するつもりであつたこと及び被告人は同月一九日午前零時一二分ころ逮捕されたことが認められるのであつて、右認定を左右するに足る証拠はない。右事実からすると、本件覚せい剤の所有権は氏名不詳者に留保されていて、被告人には帰属していないと認めるのが相当であり、被告人が氏名不詳者に金員を貸し付けた際、同人から本件覚せい剤を譲渡担保として受け取つたものであつて、その所有権は被告人に帰属する旨の検察官の主張にかんがみ検討しても、右判断を左右するに足りない。そして、被告人が本件覚せい剤を所持していたことは明らかであるが、これを被告人が所持していたものとして被告人から没収又はためには、刑事事件における第三者所有物の没収手続に関する応急措置法所定の手続を経なければならないところ、その手続がなされたことが記録上認められない本件においては、右覚せい剤を被告人から没収することはできないものというべく、これを没収した原判決には、右法令の適用を誤つた違法があり、その違法が判決に影響を及ぼすことが明らかであるといわなければならず、この点においても原判決は破棄を免れない。

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